時代雛

「学校、幼稚園、保育所で予防すべき感染症における登校・登園の基準」の作成に当たって

山形県小児科医会  秋場伴晴

 この度、山形県小児科医会は「学校、幼稚園、保育所で予防すべき感染症における登校・登園の基準」を作成しましたが、その経緯などについて述べたいと思います。

 学校での感染症を予防するために、学校保健安全法では出席停止等の措置を講じることとされており、学校保健安全法施行令では、校長が出席停止の指示を行うこと、出席停止の期間は省令で定める基準によること等が規定されています。これらを受け、学校保健安全法施行規則では、学校において予防すべき感染症の種類を第一種から第三種に分けて規定した上で、出席停止の期間の基準等を規定しています。これらに関しては、文部科学省が発行している「学校において予防すべき感染症の解説」で知ることができます。一方、厚生労働省は乳幼児の特性を踏まえた感染症対策の基本を示すという趣旨の下、「保育所における感染症対策ガイドライン」を発行していますが、法的に定められたものではありません。

 小児の診療に携わっている医師は、感染症の出席停止の期間の基準あるいは登校・登園の目安は大方頭の中に入っていると思いますが、上記の解説書やガイドラインを読んでいる方はそう多くはないと思います。最近、同じ疾患でも医師によって登校・登園を許可する基準が異なることがあり、混乱を来たしている学校や幼稚園、保育所があるとの情報が寄せられました。そこで山形県小児科医会は、上記の解説書やガイドラインを基に、学校や幼稚園、保育所で予防すべき感染症における出席停止の期間の基準や登校・登園の目安を簡潔にまとめた小冊子を作成しました。内容は、極力、上記の解説書やガイドラインに記載されている表現をそのまま用いましたが、感染症の対応のところでは、第二種感染症、第三種感染症および第三種感染症のその他の感染症を、「出席停止の期間に基準が規定されている感染症」、「必要があれば出席停止の措置をとることができる感染症」、「通常出席停止の措置は必要ないと考えられる感染症」の3つに分けて解説しました。

 実際の活用の仕方ですが、学校保健安全法施行規則で規定されている第一種、第二種および第三種の感染症においては、出席停止の期間の基準が規定されているため、学校では原則的にこれを参考にする必要があると思います。一方、幼稚園や保育所ではこれらの感染症に対する法的な規定はなく、登園の目安が示されていますが、実際には、学校における出席停止の期間の基準が参考になると考えられます。これに対し、第三種感染症のその他の感染症においては、法的に規定された出席停止の期間の基準はないために、登校・登園の目安と言う表現を使っていますが、出席停止にするか否かや、どのような状態になったら登校や登園を許可するかについては、感染症の種類や流行状況などを考慮した上で、医師の判断で柔軟に対応することができるとされています。ところが、同じ疾患で登校・登園の目安が医師間であまりにも異なると、学校や幼稚園、保育所で混乱を来たしかねないため、できれば上記の解説書やガイドラインなどに記載されている目安を参考にして対応するのが望ましく、そのためにもこの小冊子を活用していただきたいと思います。

 なお、第三種感染症のその他の感染症における登校・登園の目安では、「全身状態が安定した後」あるいは「全身状態が良くなった後」、また一方では、「症状が改善し‥‥」、「症状が安定し‥‥」あるいは「症状が回復し‥‥」など、それぞれ区別するのが難しい表現が出てきますが、今回は上記の解説書やガイドラインで使用されている表記をそのまま転用しました。

 この小冊子では、登校・登園の基準とは直接関係のない感染症の迅速診断検査について記載しました。その理由は、小児の診療に携わっている医師なら誰もが経験していると思われますが、学校や幼稚園、保育所の職員から「検査をしてもらってきてください」と言われて受診する患児がおり、その対応に時間を割かなければならないことがあるからです。この小冊子は、学校や幼稚園、保育所に配布することも念頭に入れて作成しましたので、迅速診断検査に関して正しく理解してもらい、学校や幼稚園、保育所の職員が患児の保護者にそのようなことを言うことがなくなるようにという願いを込めました。